[Three Wheel Japan]
Big Boy
■全長2490mm 全幅1220mm 全高1080mm■空冷V型2気筒 249cc 変速機5段(後進可能)※取材車はAT仕様■左右独立懸架・スタビライザー付き■価格:997,500円(車両本体・税込)※価格は2010年当時。
販売終了モデルです。
Interview
「原因はよくわからないんですが、体中に常に力が入っている状態。
杖を突きながら歩くことはできますが、正座やあぐらは無理なんです」
そんな川部昌弘さんがトライクに乗り始めたのはちょうど
3年前。
趣味で乗っていた原付バイクを
支えるのがつらくなってきたことがキッカケだったそうです。
「トライクの存在自体は20年前から知っていました。
そこでいろいろと物色していたら、スリーホイールJAPANにたどり着いたんです」
クルーザースタイルでAT仕様も選べる『ビッグボーイ』が
川部さんの目に留まりました。
-----これならギヤチェンジできなくても乗れる。250ccクラスだから維持費も安い----
ただし、どうやって乗り降りするかが問題でした。
「日によって体調は違いますし、ステップが滑ると危険。
そこで、またがり方やステップの位置、大きさ、角度などを試行錯誤した結果、
現在のスタイルに落ち着きました」
◎
左上:足でペダルを操作しにくい川部さんのために、左手でリヤブレーキを掛けられるように仕様変更。◎
右上:ステップまわりの改造が「トライクに乗れるかどうか」の重要ポイントでした。足を滑らせて転ばないように、位置や角度、形状、表面仕上げが工夫されています。◎
左下:シート左右にハンドグリップを増設。「これがなければ乗れなかった」と川部さん。◎
右下:乗り降りの際にパンツの裾が触れないように、排気系の取りまわしを変更。日常の足として使うために大型トップケースを増設。この中に折りたたみ式の杖を入れているそうです。
車両製作と同時にモディファイを手掛けたスリーホイールJAPAN・岡本は
当時を振り返ってこう言います。
「こちらが“よかれ”と思ってグリップやステップを増設しても、
たいていは役に立ちませんでしたね。
むしろオーナーさんの邪魔をしてしまうことのほうが多かった」
なぜか?
「体が不自由な方は、ひとりひとり体の使い方が違いますし、
我々自身にはそれを再現することができませんからね。
だからこそ、よく話を聞いて、体の使い方を観察して、
オーナーさんと一緒にモディファイしていく姿勢が大切でした」
今ではトライクにもすっかり慣れ、乗り降りの仕方も変わりました。@まずは両手でハンドルをつかみ、拡張したフロアに右足、シリンダー横に増設したボードに左足を載せます。A左足で立ち上がり、右足をまたぎます。B右足を拡張したフロアに着けたら、シートに腰を下ろします。以前(ピリオンシートに腰かけてから右足をまたぐ)よりも早くてスムーズな方法です。
やっぱり、時間と手間をかけ、お互いに対話しながら改良していかなければ
本当に楽しく役に立つトライクにはならないのでしょう。
「あとは-----ペダル式だったリヤブレーキを左手で操作できるようにしたり、
サイドブレーキを新設したり、マフラーの取りまわしを変更してもらったり。
メーターバイザーもオススメです」(川部さん)
おかげで、雪が積もった日以外は「
毎日乗っている」とか。
もはやトライクが生活必需品になっていると言ってもいいようですね。
「風が吹いても、雨が降っても、赤信号で止まっても、
転ぶ不安がないのがトライクのよさ。
クルマではとうてい味わうことのできない
解放感も魅力です。
全身で風を切って走るのが、なんとも気持ちよくて------」
友達の輪もいっぺんに広がりました。
「クルマよりも気軽に出かけられるので、
いろんなところに
ツーリングに行くようになりました。
そこで
出会う様々な人たちとの会話が、また楽しいんです。
トライクに乗っているというだけで、しょっちゅう声を掛けられますから、
引っ込み思案でも心配はいりませんよ(笑)」
取材にうかがった当日もトライク
仲間が次々に訪ねてきて、
あそこの景色はどうだとか、あの○○は美味いとか-----
尽きることのない話題と笑顔に囲まれていました。
その中心にいるのはいつも川部さんです。
「壊れて走れなくなるまでコイツに乗り続けますよ。
どうしてもダメになったらスカイウェイブトライクにしようかな?
いずれにしろ“トライクなしの生活”なんて考えられませんね」
取材後記
底抜けに明るく、人懐っこいのが川部さん。
「歩くパワースポット」と例えたくなるような方です。
だから、いつもたくさんの仲間に囲まれているんでしょうね。
そんな姿を拝見しているだけで、トライクの楽しさが伝わってきます。
毎日走り回っているだけあって、おすすめのツーリングスポット情報も豊富。
たくさんうかがってきたので、みなさんにも順次、お裾分けしていきます。
(文・撮影-----梶 浩之)
※『THREE WHEELS MAGAZINE』Vol.3
(2012年9月22日発行/定価1,500円)に
川部さんの記事が掲載されています。